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コラム : 第86回

オフィスに「香り」を取り入れる理由

ある「香り」をかいだときに、いつも同じ情景が頭に浮かぶ。

こんな体験をしたことはありませんか。

  • 夏の夕方の匂いが、子どもの頃の思い出を蘇らせる
  • ある香水の「香り」が、昔の恋人のことを思い出させる

後者は、2019年に大ブレイクした有名な歌の歌詞にもありましたね。サビの語感やリズムも良さもさることながら、この気持ちそのものに共感したかたは多いのではないでしょうか。

また、アメリカのある研究グループの報告によると、「匂いを感じない状況で5年経つと、他のすべての疾病よりも死亡確率が高まる」とも発表されています。生死にも関わるとは、ただ事ではありません。

市場規模でみても、アロマ市場は、10年前と比較して2,500億円から3,500億円へと140%急拡大しています。

じつは、働く場にも「香り」は大きな力を発揮します。今回は、そんな「香り」のもたらすポジティブな効果について取り上げてみたいと思います。

ちなみに、匂いの類義語には、すぐに思い付くものだけでも「香り」、「匂い」、「臭い」と3つ。それぞれどんな違いがあるのかをご存じですか。コラムの最後に、おまけとしてまとめてみました。そちらもお楽しみに!

(本稿では、「香り」を多用しています)

「香り」の効果を科学する

「香り」は、古代より五感のなかで最も神秘的で崇高なものと考えられていました。その象徴的な存在が、プトレマイオス王朝最後の女王クレオパトラ(BC69~BC30)。彼女は、バラの香りによって英雄たちを自身の虜としたと言われています。また、古代ローマ時代の自然の風物を編纂した「博物誌」には、バラの香りの効果・効能についての記述があります。

古くから特別なものと考えられ、重要な戦略にも利用されてきた「香り」。

それを司る五感のひとつ「嗅覚」は、身体の機能を研究する学問である「生理学」の観点から解明しようとしていたために、じつは長い間、解明されないままでした。

事態が急展開を迎えたのは、2004年のこと。

コロンビア大学のリチャード・アクセル博士とフレッド・ハッチントンがん研究所のリンダ・バック博士のノーベル医学生理学賞受賞(「匂い受容体遺伝子の発見と嗅覚メカニズムの解明」)によって、分子生物学に旋風が吹き込まれました。これを契機に、嗅覚系の分子・神経回路レベルでの解明が急速に進みます。

嗅覚と脳の関係において最も重要な発見のひとつは、その経路。

嗅覚以外の感覚は、思考の脳と呼ばれる大脳新皮質を経由してから、大脳辺縁系(生命維持、本能的な行動や喜怒哀楽などを司る脳の部位)に伝わる仕組み。

それに対して嗅覚は、五感の中で唯一、「大脳辺縁系」に直接作用する(大脳新皮質を経由しない)ため、より鮮明な記憶を呼び起こすのだと言われています。

ブランド戦略家のマーティン・リンストローム氏による調査では、五感で感じる刺激によって感情や記憶が呼び起こされるもののうち、なんと75%が「嗅覚」への刺激であるというデータも。

また、嗅覚で得られた情報は、それ以外の感覚で得た情報に比べて100倍強く記憶に残るとも言われます。そんな嗅覚の特性を活かし、「●●●店に行くと××の香りがする」と印象付ける、ブランド認知のためのマーケティング手法も広く活用されています。ウェスティンホテルなどはその代表格ですね。

プルースト効果(Proust effect)

引用:Wikipedia Marcel Proustより

冒頭でご紹介した「特定の匂いが、それに結び付いた記憶や感情を呼び覚ます」という現象。これを「プルースト効果」といいます。

プルーストとは、フランスの作家マルセル・プルーストのこと。彼が半生をかけて執筆した、原文で3000ページを超える長編小説『失われた時を求めて』中に、その由来があります。

物語は、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した際、その香りが、幼少期の夏、家族とともに過ごした田舎の風景が鮮明に蘇るというシーンから始まります。この印象的な描写から、このような現象はプルースト効果と呼ばれるようになったといいます。

プルースト効果は身近に実感できる現象であるため、じつに多くの事例が報告されていますが、可能性を感じる事例を2点ご紹介します。

Case1 認知症患者の記憶が蘇った

この事例は、「認知症の方に、過去の想い出に紐づいた香りを嗅いでもらうことで、どうしても思い出せなかった家族との記憶が蘇った」というもの。ご家族にとっては大きな喜びだったに違いありません。介護施設の一部では、自律神経を整えるために香りが導入されているケースもあるそう(※1)。プルースト効果は、医療にも貢献していました。

  • ※1
    自律神経の正常機能は、体調管理において重要。そのカギを握るのが、交感神経と副交感神経の切り替え。特定の「香り」によって、自律神経の切り替えができるとされています

Case2 試験勉強の効率が向上

「重要な試験に際して、ある『香り』の漂う環境下で勉強。本番試験時、同じ『香り』のするものを机上に置いて臨んだところ、記憶を呼び起こす大きな助けになった」という、学習効果を向上させた事例も報告されています。将来何かの試験に臨む機会があったら、ぜひ試してみたいところです。

もしかしたら、「特定の『香り』を纏って意中の相手に接触しておくことで、その相手が別の場所でその『香り』を嗅いだ際に記憶が蘇り、やがて相手が好意を抱くようになる」そんな効果もあるかもしれません。他の刺激よりも嗅覚刺激は100倍強く残りますからね。

このように、プルースト効果は大きな可能性を秘めていると言えそうです。

オフィス×「香り」

空間に向けて「香り」成分を散布するマシン「ディフューザー」。オフィスや商業店舗などには専用の業務用ディフューザーが存在します。

現在、オフィスに「香り」(業務用ディフューザー)を導入している企業は、どのような目的で実施しているのでしょうか。メーカー資料や各社の事例などから、大きくは次の2点に集約できそうです。

「サステナブル」推進のために

既に定着しつつある働き方改革。投資も必要だし手間もかかる…と頭を抱えてしまうのはまだ早いかもしれません。「香り」のもたらす効果は、充分に貢献してくれる可能性があります。

特定の「香り」によって、自律神経の切り替えができるとされているのは前述のとおり。その効果を従業員の方々の健康促進に役立て、さらに適度なリラックス効果によって、生産性の向上が期待できそうです。

健康で、安定したパフォーマンスを発揮できた従業員は、自己肯定感も高水準で安定させることができます。従業員と企業との信頼関係が深まり、エンゲージメントを高めることに繋がる、という好循環が生まれるかもしれません。

ブランディング効果

来訪者に心地良い「香り」を感じてもらうことで、好印象を与えることができます。アイスブレークにも最適なネタになってくれそうですね。また、その印象が独自のブランドとして社外に認識されることが、ブランド価値を高めることになります。

人材採用においても、「香り」はオフィスに好印象を持ってくれる一助となるでしょう。また、そのリラックス効果によって面談がスムーズに進行、相互理解が深まることで、選考体験をより有意義なものにしてくれそうです。

業務用ディフューザーの導入事例

オフィスに戦略的に「香り」を導入された企業様から、3社の声をご紹介します。

凸版印刷株式会社 様

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「オフィスの環境改善に取り組む中で、香りの観点からのアプローチもできるのではと導入を検討しました。目的は、働く場所を視覚以外のアプローチで五感に訴えかける空間に変革することです。(中略)初期投資がないうえ、機能面も優れている点が決め手となりました。消臭効果も大きな魅力でした。(中略)『何かいい香りがする!』『従業員のためにここまでするのはすごい』など、好意的な意見が多く寄せられます」

アニコム損害保険株式会社 様

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「ご足労いただく方をおもてなしする『エントランス』という場に対する弊社のこだわりを、香りの演出によってより強く感じていただけるようになったと実感しています。毎回楽しみにしてくださっている方も多くいらっしゃいます。お取引先様にリラックスした状態でお待ちいただける空間づくりが実現したことも、社員から好評です」

株式会社ブルーキャピタルマネジメント 様

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「弊社は、エントランスや会議室といったお客様も入られる部分や執務室・お手洗い・休憩室で香りを変えております。社内にいると視覚や聴覚でたくさんの情報を拾う事となりますが、嗅覚によって気分転換が出来ているかと思います。また、近隣の飲食店や道路を走る自動車の臭いが社内に入ってくる事がありましたが、消臭効果により、それらが気にならなくなりました」

(事例掲載協力:株式会社アントレックス)

「香り」を導入するデメリットは?

「香り」を導入するうえで、何か障壁となるようなことはないのでしょうか。
当社調べでは、以下のような懸念を感じるお客様が、過去に一定数いらっしゃいました。

  • メンテナンスが大変なのでは…?
  • 臭い(※2)が取れるなんて本当なの…?
  • 「香り」を嫌う従業員もいるのでは…?
  • 高額なのでは…?
  • ※2
    ここでの臭いは、加齢臭や、汗の臭い、服に染み付いたタバコ臭、ランチ後の臭いなど

確かに、流通している製品の中には、メンテナンスが大変なものや、高額なもの、などが相当数あるのは事実。FRSでは、「香り」を利用したブランディングや、ニオイ問題を解決した実績があります。

特に、喜んでいただけた事例としては、ニオイ問題。オフィス近隣の飲食店からのニオイでお困りのお客様は、消臭効果のあるディフューザーを導入されて問題を解決しました。また、ビルの埃っぽいニオイ、社員の服に染み付いたタバコのニオイを何とかしたいというお声も。市販のディフューザーでは効果を得にくい消臭分野ですが、消臭メカニズムを加味して生まれたディフューザーを選ぶことで、そういった問題にも効果を得られます。

現在、FRSが取り扱う業務用ディフューザーの特徴は次のとおり。

  • メンテナンスフリー
  • タイマー設定可能
  • 広範囲への拡散
  • 無料お試し期間あり
  • 消臭効果が期待できる

こんな優れものがあるのです。

なお、ディフューザーの効果最大化のためには、空気の流れを考慮した設置も非常に重要。「まったく効果が出ないと思ったら換気扇の真下に置いていた」などという笑い話も、さほど珍しくはありません。

さいごに

今回は、「香り」の効果・効能などについてレポートしてきました。

「香り」の利点を整理しておくと、

  • 五感で感じる刺激によって感情や記憶が呼び起こされるもののうち75%が「嗅覚」への刺激
  • 嗅覚情報は、それ以外の感覚で得た情報に比べて100倍強く記憶に残る

五感のなかで優れた機能を持ち、それをオフィスで活用すると、

  • リラックスや集中がしやすくなり、生産性が向上する
  • 香りによる印象付けでブランディング効果を得られる

など、「働く場」「企業」の質を上げる魅力的な効果が期待できます。オフィスの環境改善を考える際は、「香り」を意識してみてはいかがでしょうか。

解決してもらいたい課題がある、詳しい製品情報を知りたい場合、等々、まずはお気軽にご相談ください。

おまけ ~ 表現の使い分けについて ~

嗅覚で感じ取るものの呼称には、「香り」、「匂い」、「臭い」、メジャーなもので3つ。さらに、かおりの字には「薫り」、「馨り」とあるそう。諸説ありそうですが、それぞれについて整理してみました。

・かおり 香り… 嗅覚に訴えかける刺激。好ましいもの対して使う。品の良さ、心地良い感覚を含む。
薫り… 「香り」に近い。少し上質な意味を含む。お香などは「薫く(たく)」と表現され、香草などに点火して発生させる場合に使われることが多い。
馨り… 「香り」に近い。遠くまで影響するような好ましい種類のものについて使用。
・におい 匂い… 嗅覚に訴えかける刺激、またはその元になる空気中の物質。好ましいものに対して使う。
臭い… 嗅覚に訴えかける刺激、またはその元になる空気中の物質。好ましくないものに使う。比喩表現にも使われる(「犯罪の臭いがする」など)。

最後までお読みいただきありがとうございました!

(著:FRS広報チーム)