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コラム : 第83回

東洋一の金融街と呼ばれた「兜町」の現在

かつては日本のウォール街とも呼ばれ、世界屈指の金融センターとしてその名を轟かせた日本橋「兜町」。明治以降、東京証券取引所の周辺に多くの証券会社や銀行が集積、金融マンたちで賑わっていました。

しかし、証券が電子取引されるようになったことで各証券会社が証券取引所に集う必要は無くなり、各社とも丸の内や大手町など、より好アクセスなビジネスの集積地にオフィスを構えるようになっていきました。

現在、兜町に本店を構える金融機関は一部となり、金融街として発展してきた街の様子は変化しつつあります。今回のコラムでは、そんな兜町のいまを採り上げます。

兜町の歴史を紐解く

証券界の守り神とされる兜神社

「兜町」の起源

兜神社の境内には「兜岩」という岩があります。940(天慶3)年、承平天慶の乱で平将門を討ち取った藤原秀郷が、兜岩のある兜神社で将門の兜を地中に埋めて供養したというもの。この岩がのちの「兜町」の地名の由来になった、というのが有力な説です。

もともと沼地だった兜町付近は、江戸時代に入ると江戸城築城のために埋め立てられていきました。当地は、隅田川河口部、および海(現在の東京湾)からの敵襲に備えるための軍事上の要衝。三河時代から徳川家の水軍を牽引していた向井将監や間宮造酒丞、小浜弥三郎等など、幕府水軍衆と呼ばれる猛者たちの屋敷が立ち並び、江戸の守りを強固なものにしていました。

株式・金融の町へ

1868(明治元)年、明治維新の恩賞として、兜町周辺の武家地が明治政府に収公され官有地となり、当地は「兜町」と命名されました。兜町には、民部省通産司(国の財政等を管轄していた省庁)や政府公認の米商会社(米の先物取引を行なう場所)が設立されたほか、渋沢栄一翁のリーダーシップのもと、土地を譲り受けた財閥企業等により大小の銀行が設立されていきます。

JPX Webサイトより

1873(明治6)年の第一国立銀行本店、1878(明治11)年には東京証券取引所の前身である東京株式取引所が開設(蛎殻町に移転した米商会社の跡地に設立)、第一国立銀行をはじめ年末までに4社の株式会社が上場。こうして兜町は、金融街として急速に発展していきます。株式取引所の周辺には、証券会社や銀行の支店などが軒を連ね、さらにその周辺には金融マンたちを相手にした旅館や飲食店などが集中します。

1923(大正12)年9月1日に起きた関東大震災では、兜町の一帯は焼け野原に。そのような中、同年10月27日には、焼け跡の天幕内で株式の現物取引が開始されたそう。

JPX Webサイトより

1996(平成8)年末に打ち出された金融ビッグバンの様々な金融制度改革のひとつとして、東京証券取引所は売買執行の迅速化やコスト削減、効率化を図ることを目的にすべての取引をシステムに移行し、1999年4月30日、株券売買立会場を閉場しました。

兜町の聖地巡礼

兜町は、明治維新以降の日本の近代化を象徴する街。「コト始めの街」「投資の街」「証券の街」として歴史を刻んできました。そんな兜町は、日本の近代史を語るうえで欠かせない聖地の宝庫。代表的なものをご紹介していきます。

証券取引所発祥の地

兜町のシンボル東京証券取引所(現在)

1878(明治11)年は、東京実業界の有力者であった渋沢栄一翁、三井養之助らの出願により、大隈重信の免許を受け、兜町に東京株式取引所が誕生しました。一帯には多くの証券会社が立ち並び、兜町が証券業界、証券市場の中心となる基礎が作られていきます。

銀行発祥の地

現在のみずほ銀行兜町支店のビル壁面の銘板

渋沢栄一翁が中心となって開業された日本最古の近代的銀行である第一国立銀行(統一金融機関コード0001)は、1873(明治6)年、現在兜町ビルの所在する地に誕生。当時の建物は、三井組が建てた「三井組為替方」を譲り受けたものでした。

郵便局発祥の地

現在の日本橋郵便局

日本に新式郵便制度が発足した明治4年(1871年)に、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密により、駅逓司(明治初期における交通通信をつかさどる官庁。現日本郵政公社)と東京の郵便役所(現東京中央郵便局)が置かれました。

佐渡の赤石

1888(明治21)年に渋沢栄一翁が兜町邸宅(現日証館所在地)を建てた際、日本経済の繁栄を祈念した縁起石として当地に設置されました。渋沢栄一翁は、のちに三田綱町邸宅に移り住む際にも移設するなど、生涯大切にしていました。

電灯供給発祥の地

1887(明治20)年、東京電燈会社(日本最古の電気事業者)によって電燈局(発電所)が設置され、近隣の企業などに供給したとされています。

日本酒の聖地

江戸時代には、酒問屋で賑わっていた兜町は、「日本酒の聖地」でもありました。新規上場のときの名物イベントである、東京証券取引所での5回の鐘撞は、酒の原料である五穀豊穣にちなんでいると言われています。

現存する歴史的建物

兜町には、明治から昭和初期にかけて建築された、当時の空気をうかがい知ることのできる重厚な建造物がいくつか残っています。その中のいくつかをご紹介します。

日証館

1928(昭和3)年、東京株式取引所により旧渋沢栄一邸の跡地に建設された日証館。竣工当初は東株ビルディングと命名されました。1943年(昭和18)年の日本証券取引所設立後、日証館と呼ばれるようになりました。第二次世界大戦後、最も多いときには35社の証券会社が入居する最大の金融ビルでした。

日証館は、リノベーションを重ね現在も利用することで、建物ライフサイクルコストの低減や兜町の歴史的価値保全への貢献等が評価され、2013(平成25)年、日本政策投資銀行による「DBJ Green Building認証」でGOLDを獲得しています。

マイクロ・コンプレックスK5

「K5」は、以前は銀行として使われていた延床面積約2,100㎡の兜町第5平和ビル(1923年竣工)を、歴史的建築物の重厚感はそのままに、内部をフルリノベーションした複合施設として2020年2月に開業。「K5」の名称は、改修前名称の兜町第5平和ビルに由来するそう。

施設の2F~4Fは、英ホテルデザイン誌「Sleeper」が主催する「AHEAD ASIA 2021」において「HOTEL CONVERSION」部門で入賞を果たしたHOTEL「K5」。B1・1Fには、ニューヨークのクラフトビールブランドBrooklyn Brewery の世界初のフラッグシップ店「B(ビー)」や、厳選された書を読みふけりながら、アジアのお茶や漢方をベースにしたオリジナルカクテルを愉しめるライブラリーバー「⻘淵(アオ)」など、話題に事欠かない飲食店がラインナップ。まさに現在の兜町を代表するスポットのひとつになっています。

新しい兜町の魅力 ~点から面へ~

歴史の面影を残しながら、新しく生まれ変わろうとしている兜町。地場の有力不動産企業の牽引する「日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト」の目玉のひとつが、かつての兜町エリアにはなかった全く新しい飲食コンテンツの誘致。それらが集まり相乗効果を生み出していくことで、点在する魅力同士がつながり、高め合い、やがては面になっていくことを目論んでいます。ここでは代表的な飲食コンテンツの中のいくつかをご紹介していきます。

SR(エスアール)

鰻屋「松よし」の創業の地に掲示された銘板

約70年間兜町の歴史を見守り続けた鰻屋「松よし」。証券マンたちにこよなく愛された名店の跡地には、スウェーデン・ストックホルムで焙煎された豆を空輸し提供するSR(旧:STOCKHOLM ROAST)。コーヒーだけでなく、ワイン・クラフトビールも供され、アート・音楽なども混ざり合う癒しの空間です。

Teal(ティール)

2021年秋、日本の近代史の息吹を感じる日証館にOPENしたチョコレート&アイスクリームショップ。Top of Patissier in Asiaベストショコラティエを受賞したショコラティエと、元ミシュラン星付きレストランパティシエの2人が生み出す唯一無二のチョコレートとアイスを展開。

Neki(ネキ)

フランスや国内のグランメゾンで修行後、渋谷の人気店「ビストロ・ロジウラ」のシェフを務めた西恭平氏がレストランをスタート。火入れに拘った肉や日本の四季の野菜などの食材を自由に取り合わせ、親しみのなかにどこか新しさを感じる品々と自然派ワインが楽しめる。(日本橋兜町。茅場町再活性化プロジェクト・プレスリリースより)

ease(イーズ)

予約の取れない星付きフレンチ「シンシア」の立ち上げからシェフパティシエを勤めた大山恵介氏が、新たに開業したパティスリー/ベーカリー。「安心して、肩肘張らずに食べられるお菓子」をコンセプトに、山葵の清涼感を遠くで感じるショートケーキや酸味あるアマゾンカカオのシュークリームなど約15種類の生菓子に、フィナンシェなどの焼き菓子、パンが並ぶ(日本橋兜町。茅場町再活性化プロジェクト・プレスリリースより)

撮影当日は、こちらでひと休み。パンやスイーツをいただきました。

自家製天然酵母のクロワッサンは、サクサクと歯切れがよく、バターの香りがしっかりと感じられ、非常に美味。美しいアートのようなグラスデザートは「日向夏」。爽やで上品な甘さがたまらない逸品。果実のゴロッと感も食べ応え十分です。

こちらの「ease」や日証館にOPENの「Teal」は、生菓子から焼き菓子まで購入できるので、近隣オフィスの方々にとって訪問先への手土産や会社への差し入れに重宝しそうです。実際、街を歩いているとこちらのお店のバックをさげて歩いているスーツ姿の方々をちらほら見かけました。

新しい兜町の魅力 ~働く場~

2021年8月竣工の「KABUTO ONE」

兜町の魅力は、金融街としての歴史のある街、注目の飲食コンテンツが集う街、という側面のみではありません。オフィスに選ぶ場所としても魅力的な要素が備わった街なのです。その要素とは、

  • 日比谷線と東⻄線が乗り入れ各方⾯に好アクセス!
  • 大手町や日本橋に徒歩圏内なのに賃料に割安感!
  • 空室率が比較的高く豊富な選択肢!
  • 再開発が進む周辺エリアと比べ定期借家契約の物件が少ない!
  • 割安感のある飲食店が多い!(脱ランチ難民)

固定費を抑えつつも、都心に近く、各所に好アクセスなオフィスはないものか

こんな風にお考えの企業様にはジャストフィットの街だといえます。ピンときた企業様は、是非お問い合わせください。

以上、今回は兜町について採り上げました。読者の皆さんに、ご当地の魅力を少しでも多く伝えることが出来ていたら嬉しいです。最後まで読んでいただき有難うございました。

(著:FRS広報チーム)

参考資料

・沿革(JPX日本取引所グループ)

・株式取引所開設140周年(JPX日本取引所グループ)

・日本橋兜町(東京都印刷工業組合 日本橋支部)

・兜町に強い“点”を打つ。 マイクロ・コンプレックス施設「K5」完成。(Bridgine)

・K5オフィシャルサイト