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コラム : 第78回

持続可能な「住」の話。「ZEH」について解説します

コロナ禍を背景に世界中の人々が考えるようになった「本当に大切なものとは?」という重要な問い。その中で、人々が生活するうえで重要だとされる「衣・食・住」に代わって、「衣・食・住・働・遊」という言葉で語られることが増えています。

当社コラムの「持続可能な~」シリーズでは、SDGs、温室効果ガスや脱炭素に貢献する取り組みについてお送りしていますが、今回のコラムは、過去にリリースさせていただいた「衣」と「食」に続いて、持続可能な「住」についてレポートしたいと思います(持続可能な「衣」、「食」については以下のリンクから)。

持続可能な「衣」の話。(2022/1/12)

持続可能な「食」の話。(2021/11/25)

2020年10月、政府により2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル宣言」が行われました。その実現へ向けた「地球温暖化計画」(2021年10月閣議決定)によると、2030年度において家庭部門の二酸化炭素排出量を2013年度比で66%削減する目標が掲げられています。産業部門では38%、業務その他部門(オフィス等)では51%、と部門別でみても家庭部門は最も高い削減率。地球温暖化に歯止めをかけるためには、産業界だけでなく家庭での省エネルギー対策も重要だということ示しています。

この家庭内での大幅な省エネルギー化で注目されているのが「ZEH」。2019年度末時点で、新築注文住宅のうち20%超が既にZEHになっているといいます。ZEHとは、いったい何なのでしょうか。

ZEHとはいったい何なのか?

ZEHの読み方は「ゼッチ」。

Net Zero Energy House
(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

の略称で、「正味(ネット)でエネルギー収支がゼロ以下になる家」という意味。

2021年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、以下の目標が掲げられました。

  • 2030年以降は新築住宅でZEH基準の水準の省エネルギー性能を確保
  • 2050年には既存住宅の平均でZEH基準の水準の省エネルギー性能を確保

つまり、2050年には既存の建物すべてを平均してZEH基準にするために、2030年には新築の住宅すべてがZEH基準になるように規制と支援の強化をするというのです。

基本計画遂行のため経済産業省に設けられた「ZEHロードマップ検討委員会」では、どのような住宅をZEHと呼ぶのか、また、ZEHの定義や評価方法などがまとめられています。

ZEHは、以下の3つの要素から成ります。

  • 高断熱
    住宅の屋根、外壁、窓などからの熱の出入りを抑えられるよう断熱性能の高い材料を使用する
  • 省エネ
    エネルギー効率の良い冷暖房設備や照明設備を使用する
  • 創エネ
    太陽光発電パネルなどの設備を屋根に設置し再生可能エネルギーをつくる
これらによって、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した住宅

これらを分かり易く図式化したものが、資源エネルギー庁による以下の画像です。

画像引用:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイトより

コロナ禍以降、急激に一般化したテレワークの影響で在宅時間が延長傾向にあり、ZEHのメリットが一層享受し易くなっているといいます。

そんなZEHのもたらすメリットとは。

ZEHのもたらすメリットは?

ZEHのもたらすメリットは、主に次の3つが挙げられます。

(1)経済性
高い断熱性能や高効率設備の利用は、月々の光熱費低減に貢献します。太陽光発電等の創エネを行なった場合、余剰電力の売電時に収入を得ることができます。
(2)快適性
高断熱の家は、室温を一定に保ちやすいため、夏は涼しく、冬は暖かい快適な生活を送ることができます。冬季には、効率的に家全体を暖められるので、急激な温度変化によるヒートショックによる心筋梗塞等の事故を防ぐ効果も。
(3)レジリエンス
台風や地震等、災害の発生など非常時の停電においても、太陽光発電や蓄電池を活用することで電気が使用できます。地震や台風などの天災が相次いでいる昨今、これは大きな安心材料になりそうです。

経済産業省発表の資料では、実際にZEHを採り入れた住宅の居住者に行なったアンケート調査では、以下の回答が得られています。

画像引用:経済産業省資源エネルギー庁発表資料より

快適さ、暖かさ、光熱費の低減の部分で特に満足しているなど、ポジティブな回答が寄せられています。

省エネルギーの電気製品とは?

近年、エネルギー消費機器の効率は、大きな進化を遂げています。主要な電気製品を例示すると、

  • 冷蔵庫 
    今どきの冷蔵庫は10年前と比べると約40〜47%の省エネ
  • 照明器具
    電球形LEDランプは一般電球と比べると約86%の省エネ
  • テレビ 
    今どきのテレビは9年前と比べると約42%の省エネ
  • エアコン
    今どきの省エネタイプのエアコンは10年前と比べると約17%の省エネ
  • (資源エネルギー庁発表資料より)

このように、大きな性能の向上がみられます。「もったいない精神」で長く愛用している電気製品が、じつは逆にもったいないことになっている可能性も…。

さて、この技術革新を支えている柱のひとつが、こちらの制度です。

トップランナー制度
… 家電製品や自動車などの機器の省エネルギー基準を、それぞれの機器において、現在商品化されている製品のうち、最も優れている機器の性能以上にするというもの

画像引用:資源エネルギー庁省エネポータルサイトより

トップランナー基準は、省エネ法の中に規定され、対象となる「特定機器」に指定される要件は次の3点。

  • 我が国において大量に使用される機械器具であること。
  • その使用に際し相当量のエネルギーを消費する機械器具であること。
  • その機械器具に係わるエネルギー消費効率の向上を図ることが特に必要なものであること。

メーカーや輸入事業者が、この制度の存在によって常に目標達成を意識し、その結果を表示していることで、効率向上が継続できているというわけです。

電気製品の省エネルギー性能について、資源エネルギー庁が比較資料を公表しています。カテゴリーごとに分類されているので、興味のあるかたはご参照ください。

省エネ型製品情報サイト

法人向けサービスにはなりますが、地球環境負荷の低減に貢献する非常にユニークな照明設備のサービスをひとつご紹介します。

オランダに本拠を置くSignify N.V.(シグニファイ)社は、「『明るさ』をサービスとして提供する」という斬新な発想のサービス「LaaS(Lighting as a Service)」を開始。LaaSでは、法人顧客は従来のように照明を購入する必要はなく、必要な照明性能をシグニファイ社に発注、その運用を委ねるというスタイル。無駄に消費される電力量を削減でき、モノ売りではなく、本質的な課題に焦点を当てたソリューションというわけです。まさにトップランナーならではの照明版SaaSモデル。

エネルギー効率の高い LED 照明とスマート照明制御により、照明エネルギー使用量を最小限に抑え、持続可能性目標を達成することができます。当社の Interact IoT プラットフォームにより、コネクティッド LED 照明システムと埋め込みセンサー ネットワークがデータを収集し、見識、メリット、新たなサービスをご提供します。
(Signify社Webサイトより)

シグニファイ社のサービスの根幹部分にもなっているのが、データの収集や分析、最適化。そのためにはまず「みえる化」するための仕組みが必要なのは、住宅においても同様です。その仕組みが「HEMS」です。

HEMSとは何か?

画像引用:日本電気計器検定所Webサイトより

HEMSの読み方は、「ヘムス」。

Home Energy Management System
(ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)

の略称で、家庭内の電気製品などを管理・制御するシステムを指します。IoT技術によって、

  • 使用電気量をリアルタイムで把握、AI技術によって調整できる
  • HEMS配下の機器を、スマホなどで遠隔操作できる

などを備えたものも多く、接続できる電気製品の種類や数は続々と増えています。その歴史を紐解くと、2016年に始まった電力の小売り全面自由化で、「スマートメーター」(通信機能を備えた次世代型電力メーター)の普及が加速、これにより家庭内での消費電力量の可視化が実現。しかし、電気代削減や、温室効果ガス排出量削減のために、さらにもう一歩踏み込む必要がありました。それは、「どの機器がどの程度の電力を消費しているのか」です。このニーズの高まりに応えたのがHEMS。

HEMSは、「ECHONET Lite」という共通の信号規格を使用することで、異なるメーカー間でも信号を送り合える仕組みを創りました。この恩恵で正常な競争環境が整備され、ユーザーの裾野が広がっているというわけです。

ZEHの課題は?

今後さらに普及を進めるためには、技術面では2つの課題があるといいます。

① 省エネルギー以外も制御する必要がある
HEMSの技術開発の目的は、省エネルギーを主目的としていましたが、現在、家庭内の太陽光発電システムや電力の貯蔵庫としての蓄電池、電気自動車なども加わりつつあり、さらに高度な制御が求められています。
② 電力以外も対象にする必要がある
HEMSは、電力の管理・制御にのみ注目され開発されてきました。今後は、電気製品のみならず、環境負荷の大きいガスや灯油による暖房機や給湯器もHEMSのマネジメント対象にすることが求められます。

これら2点の開発が進むことが、普及推進のための大きな課題となっています。

また、技術面以外でも、普及のためにはコストの問題も。実際に得られるメリットが支払う対価に見合わないと消費者に判断されれば、普及は難しいと考えられます。

ZEHを正しく啓蒙し、技術開発によってその利便性を高めながら、スケールメリットや適度な競争などによって市場価格を低下させ、魅力あるコスト感にしていくことが、今後の課題です。

まとめ

今回は、持続可能な「住」として、ZEHを採り上げました。温室効果ガス低減のため避けては通れない省エネルギー。そのために、ZEHは合理的な手法と言えそうです。

対応する電気製品は、やや高額なものもありますが、定期的に補助金の交付も行なわれています。2021年に交付された補助金は、残念ながら2022年2月までに締め切られましたが、普及促進のため、2022年も補助金が交付されることが予想されます。また、普及が進む過程で、値ごろ感のある製品の登場も期待できそうです。

今回は住宅についてレポートしましたが、オフィスでも電気製品の見直しによる省エネルギーは可能です。分かり易い例が、旧来の蛍光灯器具の直管LEDランプへの交換。このことで、消費電力を50%以下に低減できた事例もあります。FRSでは、日頃から省エネルギー、地球温暖化抑止に繋がるご提案を行なっていますので、オフィス環境の見直しをされたい法人様は、ぜひお問い合わせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

(著:FRS広報チーム)

参考資料

・経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト

・日本電気計器検定所

・環境技術解説 HEMS(環境展望台)

・経済産業省資源エネルギー庁

・シグニファイ社オフィシャルサイト