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コラム : 第73回

2021年のオフィス市況を振り返る

昨年に引き続きコロナ禍の影響を大きく受けた、オフィスマーケット。オミクロン株の出現等、“コロナ明け”、“アフターコロナ”と呼ばれる日の到来は、まだ訪れそうにありません。

しかし、新型コロナウイルス感染症は世界中で急ピッチな解明が進み、日本国内では計2回のワクチン接種が75%進んだと報じられています。また、リモートワークを中心とした新しい働き方もだいぶ浸透し、混乱する企業が減ってきています。

これらにより、企業活動にかかっていたブレーキが解除、アクセルを踏む企業が増えているのも事実。オフィスマーケットにとって明るい兆しと言えそうです。

2021年最後のコラムは、オフィスマーケットの振り返りをレポートしていきます。最後までお目通しください。

数字で読み解く2021年のオフィス市況

最初に、オフィス市況分析において高頻度で登場する、重要な用語の定義から整理していきます。

  • 都心5区   :
    千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区
  • 基準階面積  :
    多層からなる建物の中で、最も多いフロアの面積
  • 小型/中型ビル:
    基準階面積が、20坪以上100坪未満のビル
  • 大型ビル   :
    基準階面積が、100坪以上200坪未満のビル
  • 大規模ビル  :
    基準階面積が、200坪以上のビル
  • 現空面積   :
    現時点で空室状態である物件の面積(の総和)
  • 空室率    :
    現空面積 ÷ 総貸付面積
  • 潜在空室面積 :
    解約の申し入れはしたが、退去前の区画(の総和)
  • 潜在空室率  :
    (現空面積+潜在空室面積) ÷ 総貸付面積

なお、本コラムの数値分析は、

  • 2021年1月~2021年11月のデータをもとに考察(※2021年12月を含まない)
  • 空室率の推移は、現空面積で算出
  • 賃料の推移は、募集賃料で算出

しています。

空室率の変動はどうだったのか

表1 都心5区全体でみた、規模別の空室率の推移

最初に、都心5区全体の推移からみていきます。表1のグラフから都心5区全体の空室率をみると、

  • ・大規模ビル  :
    約93%上昇
  • ・大型ビル   :
    約26%上昇
  • ・小型/中型ビル:
    約33%上昇

と都心5区全体で上昇し続けた1年でした。特に上昇率が目立つのは大規模ビル。また、小型/中型ビルが一番高い空室率で推移しています。では、2019年9月以降、コロナ渦前から半期ごとに空室率の推移をみてみます。

表2 都心5区でみた、規模別の空室率の推移

2020年3月には、それまで最低水準で推移していた空室率がコロナ渦の影響で上昇へ転じており、そのまま上昇傾向が収束することなく2021年も継続していることが分かります。

空室率にコロナ渦の影響がみえ始めた当初は、小型/中型ビルが最も上昇幅が大きいという状況でした。全体の空室率を押し上げていたのはオフィス面積の縮小による移転ニーズでしたが、それも昨年で一巡した様相。その後、小型/中型ビルの上昇は小幅に転じ、2021年には反対に大規模物件の上昇幅が最も目立ちます。

2021年は中大手企業のオフィスの再編の動きが活発化。拡大や統合でまとまった面積を契約する企業も見られましたが、今年の秋ごろまで空室率が上昇し続けているのは、オフィス再編による解約が活発だったことや、新築への移転にともなう二次空室が埋まらない、などが大きく影響しています。

次に、ビルの規模毎に都心5区の空室率の推移をみていきます。

表3 大規模ビル(200坪超)の区別空室率

大規模ビルでは5区全体で上昇傾向。大規模ビルの築浅物件では、フロア1社占有の貸し方が多く、部分解約が困難なこともあり、解約時の減床単位が大きくなる傾向があります。

エリア別では、渋谷区(黄色のグラフ)では微増という状況。これは、ビットバレーとも称される渋谷区には、IT企業が集積しており、一部の企業でオフィス需要が旺盛であることが主たる要因であると考えます。とはいえ、一時期のような過熱感はなく、2017年から続いた空室率1%を下回るような状況とは一変しました。

港区では特に上昇が目立ち、空室率5%に達しようとしています。

表4 大型ビル(100坪以上200坪未満)の区別空室率

大型ビルでは、上昇と下降を何度か繰り返すエリアも見られますが、1月と11月の比較では、微増という状況。大規模ビルに入居していた企業が、働き方の多様化の影響でオフィス再編、大型ビルに転居するニーズが目立ちました。当社の社内データでも、大規模ビルから大型ビルへの動きを多く確認。それを一因として、9月頃を境に上昇傾向は収束しています。

表5 小型/中型ビルの区別空室率

小型/中型ビルでは、表2にあるように2020年は上昇率が高かったですが、2021年は全体として緩やかな上昇傾向が見て取れます。新宿区では、多少の変動があったものの、年始と比較してほぼ横ばいといった状況でした。

賃料について

表6 都心5区全体でみた賃料の推移

大規模ビル(ブルーのグラフ)では、年間を通じて緩やかに下降しています。リーシングに苦戦するオーナーが経済条件を緩和するケースが多く見受けられました。

その要因の一つに、空室を抱えたまま竣工を迎えた新築物件で、テナント契約を急ぐために経済条件緩和の動きがみられると、既存物件でも、同レベルの緩和策をとらないと割高感がでてしまいリーシングが見込めないという判断になるようです。

大型ビル、小型/中型ビルについては、賃料には大きく影響が出ておらずほぼ横ばいの状況です。「空室率の上昇≒賃料の下落」という図式は当然と思われていましたが、2021年については例年とは少し違っていました。その要因として、オーナー側が単純に賃料を下げず、付加価値を高めることでビルの魅力を高める工夫をするケースが増えてきていることが挙げられます。

  • 内装付きなどセットアップ・オフィス化、借り手の初期費用を抑える
  • 内装費用をオーナー側で負担する
  • フリーレントを多めに提供する

これらによって、表面賃料には現れない条件緩和がなされています。ビルによっては、日、週単位でオフィスを貸出しするという新しい賃貸オフィス形態も登場しました。

2022年のオフィス市況を占う

2022年のオフィス市況はどうなっていくのでしょうか。

トレンドを探る材料のひとつが、新築ビルの供給量があります。2020年は東京オリンピックの影響を受けて大量の新築ビルが供給されましたが、

  • 2021年
    約8万坪
  • 2022年
    約11万坪

と、2022年までの供給量は決して多いものではありません。

表7 オフィス新規供給量の推移

このことから、新規供給が空室率に大きな影響を与える可能性は少ないと言えそうです。しかし、コロナ禍の影響下、2022年竣工のビルの未契約区画も多く、2023年には2022年の倍の供給が予定されていることから、空室率が低下するとは考えにくく、賃料の上昇トレンドも起こりにくいはずです。

これは、借り手にとっては有利な状況と言えます。なかなか空室が出なかった人気の高いビルでも潜在空室が出ている可能性があったり、オーナーが内装費用を負担してくれる物件など、表面的な経済条件では分かりにくい物件などもあります。借り手にとっては、候補先の選択肢が増えるよい機会と言えます。

不動産サイトに掲載されている募集条件には反映されない特別な条件や、物件も多くありますので、日頃からの情報収集のうえ、戦略的に進めるのが吉。ぜひ当社のリーシングコンサルタントにご相談ください。

2022年が、読者の皆様にとって飛躍の一年となりますように。心より祈念しております。

(著:FRS広報チーム)