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コラム : 第72回

「新宿」新たな胎動

今回のコラムで採り上げるのは、官民一体となって生まれ変わろうとする街「新宿」です。

新宿は、昭和の時代から、歌舞伎町に代表される東側の繁華街・歓楽街の持つ煌びやかなイメージと、西側のオフィス街の超高層ビル群のイメージが混在する、様々な顔を持ち合わせ持つ街。その特長は、

  • 世界に通用する、その知名度
  • シンボリックな東京都庁
  • 世界一の乗降者数/日(380万人/日とも)
  • 日本一の小売商品販売額/年
  • 外国人人口が10%超

などなど、枚挙に暇がないほど。まさに、日本を代表する街のひとつと言えます。

しかし、そんな新宿には現在、いくつかの課題が。

  • 乗降者数は多いが街の人出が少ない
  • 商業地地価下落率が23区で一位
  • オフィスビル群の設備の老朽化
  • 新宿駅の東西の往来が難しく、回遊しない

など、世界に誇る副都心としては、解消しておきたいところ…。そこで、2018年に東京都・新宿区の主導で「新宿の拠点再整備方針」が策定、大規模な再開発が計画されています。

再開発のご紹介の前に、過去~現在の新宿を整理しておきましょう。

超略歴「新宿駅の歴史」

江戸切絵図内藤新宿千駄ヶ谷絵図

まず、カンタンに新宿駅の歴史から。

新宿という地名は、江戸時代に設けられた宿場「内藤新宿」に由来します。甲州街道に設けられた宿場のうち、江戸日本橋から数えて最初の宿場であり、成木街道(青梅街道)に分岐する立地でもあったため往来も多く、盛り場として発展します。しかし、(詳細は割愛しますが)風紀上の問題で廃止されたり、他の宿場町の負荷分散のために再開したりしました。風紀上の問題で廃止…。当時から既に、現在の新宿駅を想起させる特徴を備えていたことが伺い知れるエピソードです。

時代は変わって1923年(大正12年)。関東大震災によって、当時の東京市中心部は壊滅的な被害を受けます。被災者は地盤の安定した東京西側(武蔵野台地等)に移住、このことで人の流れが大きく変わり、新宿駅の利用者は急増しました。その結果、1927年(昭和2年)には既に、一日あたりの乗降客数が日本一に達しています。

戦後には、復興計画の一環として「歌舞伎町」が誕生。日本有数の繁華街・歓楽街として発展していくことになります。日本中の人々が訪れることはもちろんのこと、この煌びやかなネオン街は海外から見ても特異な光景として、海外ツアーに組み込まれることも珍しくありません。

夜の歌舞伎町

1970年代には、西新宿エリアの代名詞、高層ビル群が誕生します。新宿三井ビル(1974年)、新宿住友ビル(1974年)新宿野村ビル(1978年)、新宿センタービル(1979年)などの高層ビルが続々と竣工されました。

西新宿の高層ビル群

1991年には、当時の都庁舎の老朽化の問題、および都市機能の分散の観点から、丸の内に所在した都庁が移転してきます。

現在の東京都庁

このことで、行政の中心としての機能も加わり、現在の西新宿エリアの姿がほぼ完成しました。

近年の再開発を振り返る

バスタ新宿・ミライナタワー

新宿駅周辺の大型再開発で記憶に新しいのは、2016年竣工の「バスタ新宿/JR新宿ミライナタワー」。新宿駅の旧・新南口駅舎の跡地および線路上の人工地盤に建設された複合施設で、オフィス・商業施設・文化・情報発信施設等で構成されています。

1980年代後半から高速バス網が急速に発達した新宿駅の周辺。そこには、2つの問題が。

  • 多路線の乗降場が、運行会社ごと、西口、南口に分散して開設、乗り換えの利便性に課題
  • 国道20号(甲州街道)の歩道の混雑、車道も激しい車両混雑が生じていた

これらを解消するべく、国土交通省が事業主体となって「新宿交通結節点整備事業」を推進、駅周辺に散在していたバスターミナルを集約、タクシー乗降場を設けることで甲州街道上での駐停車を抑制し、人工地盤上に歩行空間を設置することになりました。その再開発で誕生したのが、「バスタ新宿/JR新宿ミライナタワー」。名称には、「未来な新宿」「未来への出発点」という願いが込められています。

そのほか、2020年7月19日には、約8年間工事が進められてきた「新宿駅東西自由通路」の運用が開始され、歩行者の回遊性・来街者の利便性の向上が図られました。

新宿駅東西自由通路(画像引用:新宿Webサイト)

新宿駅の変革はこれだけに留まりません。2018年に東京都と新宿区によって策定された「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」では、具体的な開発エリアや方針が定められ、官民一体となった再開発計画が組まれました。

新宿グランドターミナル構想資料抜粋

次章では、その再開発事業からいくつかご紹介していきます。

新宿駅周辺の再開発計画を紐解く

先程ご紹介したように、新宿駅周辺に誕生した「JR新宿ミライナタワー」や、「新宿駅東西自由通路」の誕生で、いくつかの課題が解消されました。しかし、同じく副都心である渋谷駅と比較すると、その変化の規模は決して大きくはありません。また、大型ビルの老朽化の問題は依然として残ったまま…。

実際に、設備の老朽化した西口の高層ビル群から、他エリアへ移転する企業も少なくありません。西口の高層ビル群はターミナル駅からは若干距離があり、他エリアで登場する駅直結型の高層ビルの方がより魅力的に映るのかもしれません。

次にご紹介する再開発計画は、直近で竣工するものから長期に渡って推進されるものまで多様ではありますが、新宿駅の持つ魅力を最大限に引き出した、復権を予感させてくれる4つのプロジェクト。

① 新宿駅⻄⼝地区(小田急百貨店跡地)再開発計画

画像引用:新宿駅西口の開発計画について(小田急電鉄)

<計画概要>

  • 事業主体 :
    小田急電鉄株式会社、東京地下鉄株式会社
  • 計画地  :
    東京都新宿区新宿三丁目および西新宿一丁目各地内
  • 敷地面積 :
    約15,720㎡
  • 延べ床面積:
    約281,700㎡
  • 主要用途 :
    商業施設、オフィス、駅施設等
  • 階数   :
    地上48階 地下5階
  • 高さ   :
    約260m
  • 着工/竣工:
    2022年度~2029年度予定

<FRSリーシングコンサルタントより>

「新宿駅西口から直結する小田急百貨店が、東京一の高さ260mの複合ビルに生まれ変わります。計画建物は、「新宿グランドターミナル構想」の一体的な再編を象徴する大規模開発。オフィス機能と商業機能の中間フロアには、新宿の特性を生かして来街者と企業等の交流を促すビジネス創発機能を導入し、イノベーションの創出を図る仕掛けを設けるとか。目が離せない再開発物件です」

② (仮称)⻄新宿⼀丁目地区プロジェクト

画像引用:(仮称)西新宿一丁目地区プロジェクト(新宿区)

<計画概要>

  • 事業主体 :
    明治安田生命保険相互会社
  • 計画地  :
    東京都新宿区西新宿9番1~12
  • 敷地面積 :
    約6,295㎡
  • 延べ床面積:
    約96,900㎡
  • 主要用途 :
    オフィス、店舗、ホール、駐車場等
  • 階数   :
    地上23階 地下4階
  • 高さ   :
    約126m
  • 着工/竣工:
    2021年4月~2025年予定

<FRSリーシングコンサルタントより>

「旧安田生命の本社ビルとして1961年に竣工した明治安田生命新宿ビル。設備の老朽化、そして2018年に東京都と新宿区で策定された「新宿の拠点再整備方針」に呼応、再開発が実施されることになりました。低層階は商業エリア、中層階から高層階は1フロア800坪超のオフィスになる予定。商業施設等の運営に定評のある森ビルが開発段階からプロジェクトマネジメントに参画、竣工・開業後のプロパティマネジメント業務を担うと発表されています」

③ 東急歌舞伎町タワー(新宿TOKYU MILANO再開発計画)

画像引用:新宿TOKYU MILANO再開発計画(東急)

<計画概要>

  • 事業主体 :
    東京急行電鉄株式会社、株式会社東急レクリエーション
  • 計画地  :
    東京都新宿区加峰区長一丁目29番1、29番3
  • 敷地面積 :
    約4,600㎡
  • 延べ床面積:
    約85,800㎡
  • 主要用途 :
    宿泊施設、エンターテインメント施設、店舗、駐車場等
  • 階数   :
    地上40階 地下5階
  • 高さ   :
    約225m
  • 着工/竣工:
    2023年春開業予定

<FRSリーシングコンサルタントより>

「オフィス区画がないのは少し残念ですが、歌舞伎町の新しいシンボルタワーの登場にワクワクしますね。この施設のコンセプトは、『“好きを極める場”の創出』という、歌舞伎町という特別な立地に相応しいもの。なんでも、『好き』を生み出す仕掛けと、来館者・回遊者が交流できる仕掛けを用意しているとか。シネシティ広場を客席に見立てた『屋外劇場的都市空間』と称される屋外ステージでは、どんなイベントが行なわれるのかも注目です。なお、民間都市再生事業計画として、国土交通大臣から認定を受けている同事業は、金融支援や税制上の特例措置等の支援を受けています」

④ 新宿駅直近地区土地区画整理事業 (東⻄デッキ・東西駅前広場)

現在の新宿駅西口の様子

計画エリア(行政発表資料より引用)

<計画概要>

  • 事業主体 :
    東京都、新宿区他
  • 計画地  :
    東京都新宿区新宿三丁目、西新宿一丁目、歌舞伎町一丁目
  • 施工面積 :
    101,000㎡
  • 着工/竣工:
    2021年~2047年予定

<FRSリーシングコンサルタントより>

「10.1ヘクタールという広大の土地の区画を整理する、20年以上の年月をかけた官民一体となった大規模な再開発です。老朽化した設備の更新と、歩行者の回遊性・来街者の利便性をさらに促進する駅前広場の構築などが予定されています」

以上、今回は生まれ変わろうとする新宿駅について採り上げました。

長らく大型商業施設、大型オフィスビルの供給がなかった新宿駅周辺エリア。今回の大型再開発によって、各エリアに魅力的なコンテンツが配され、さらに東西をストレスフリーに横断できるようになることは、街として、オフィス街としてさらに人を惹きつけることになりそうです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(著:FRS広報チーム)

参考資料

・新宿区公式Webサイト

・新宿駅直近地区に係る都市計画変更について

・新宿駅東西自由通路の整備(新宿区)

・新宿駅西口地区の開発計画について(小田急電鉄)

・明治安田生命新宿ビル新築工事着工のお知らせ(明治安田生命)

・第46回新宿区景観まちづくり審議会

・東急歌舞伎町タワー再開発計画(東急)