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コラム : 第52回

2020年オフィス市況の振り返り

本年、新型コロナウイルスは、世のあらゆるマーケットに大きな影響を与えました。

オフィスマーケットにおいても例外ではなく、2013年から続いた空室率低下と賃料上昇傾向が、コロナ禍をきっかけに潮目を迎えようとしています。

2020年最後のコラムでは、そんなオフィスマーケットの概況についてレポートしていきたいと思います。

大型オフィスの状況

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に際して、ホテル不足を解消するために容積率が緩和されました。そのため、2020年はホテル併設の大型物件の供給が増加、都内10区(弊社調査エリア)では延べ30万坪以上のオフィス物件が供給されました。

計画当初、就労人口減の日本国内において過剰供給になるのでは…との懸念の声もありましたが、各企業の好調な業績を背景に、

・優秀な人材の確保
・多拠点オフィスの集約
・好立地への移転
・働き方の多様化に対応するためのオフィス床の追加

などの要因から予測された以上に新築物件の成約が進み、2019年時点で、2020年竣工物件の8割以上の区画が既に成約しているといった状況でした。

また、2020年に比べ、2021年の竣工予定は8万坪、2022年は11万坪と供給量が少ないことから、オリンピック終了後も需要が途切れることはなく、賃料の上昇傾向が継続するという予測が立っていました。

しかし、コロナ禍によってそんな状況は一変。オフィスを巡る環境に大きな変化が見られました。

出社制限やテレワークの推進などによる需要の低下を背景に、富士通、東芝、日立などの大手企業での賃借面積の大幅な圧縮の報道や、テレワークと相性の良いIT企業からのオフィス不要論が報じられることも。

実際に、昨年度対比のオフィスの募集開始面積の合計と、募集終了面積の合計では、以下の状況を示しています。

募集開始:1.5万坪程度/募集終了:2.5万坪程度(2019年4月1日~2020年3月末までの月平均)
募集開始:3.6万坪以上/募集終了:1.1万坪程度(2020年4月1日~11月末の月平均)

また2020年の竣工物件でも、契約面積を当初の計画から削減して入居する動きもみられました。

現在、毎月2.5万坪以上の募集が純増していますが、現時点ではまだ、募集賃料の大幅の低下には至っていません。

一因として、オフィスの賃貸借契約では、解約予告期間は6カ月以上。新規募集が出た時点では、空室状態にはなっていません。コロナ禍で大型物件の誘致困難が予想され、先行きの見通しが付きにくい中、ビルオーナーも賃料を下げるという大きな意思決定にはなかなか至っていないようです。

しかしながら、条件緩和がなく成約に至らないままでは、賃貸借契約の終了を迎え、多くの募集物件が実際に空室状態になってくることは明らかです。観測としては、2021年半ば頃にはそのような状況を迎え、条件緩和によるテナント誘致が盛んに行なわれるだろうと考えています。

以上、大型物件についてみてきました。
一方で、中・小規模物件の状況はどうなのでしょうか。

中・小規模オフィスの状況

以下の表は、主要10区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、品川区、目黒区、豊島区、台東区、文京区)の基準階面積の広さ別に、2019年11月末と現在の空室率の集計データを対比しています。

表を見ていただくと、基準階面積が小さくなるほど、空室率が上昇していることが分かると思います。逆に、200坪以上の大規模ビルでは、主要10区を41エリアに分割した中で約3割のエリアで空室率が横ばい、もしくは低下しています。

この表は、現時点で空室状態である物件(※一般に「現空」と表現されます)の状況であるため、潜在空室(※解約の申し入れはしたが、テナント入居中の区画)まで含めて、少し先を見ていくことにします。

2020年11月末段階での主要10区の規模別の空室率と潜在空室率を調査したところ下記の結果となりました。

基準階面積100坪未満の中・小規模物件では、空室状態にある物件が、潜在空室率を上回っていることが分かります。募集賃料が昨年対比で下がっているエリアも見られ、既に条件を緩和してテナント誘致を積極的に開始しているビルオーナーが増えています。

賃貸借条件の交渉結果をみても、特に200坪未満の物件において、条件交渉に応じていただけるケースが増えています。新規オフィスやご移転を検討されている企業様は、情報収集を本格化されると、有利な契約ができるタイミングと言えるかもしれません。

オフィスニーズの多様化

当社のお客様からのヒアリングに基く移転ニーズの種別集計では、2020年上期は従前よりも面積拡大ニーズが低下、面積縮小ニーズが高まっていることが顕著に表れています

このグラフの推移だけをみると、

「コロナ禍の影響によって、ネガティブな理由で縮小移転が増加している」

とだけ捉えてしまいそうですが、実際はそういうわけではありません。次の円グラフを見ていただくと、面積の拡大と縮小のどちらを見ても、その理由が多様化していることが分かります。

2019年までは、面積拡大の過半数が人員増による拡大移転でしたが、2020年では、BCP対策や働き方の変化に対応し、サテライトオフィスを導入する企業が大幅に増加しています。

一方で、面積縮小については、業績悪化による縮小移転が主でした。しかし、2020年では、テレワークの導入によるオフィス最適化の検討の結果、面積を削減するという経営判断が最も多い理由となっています。

まとめ

従来、オフィスの面積を検討する主な判断材料は、従業員1名につき何坪、という入居予定人数からの乗数で面積を割り出すことが一般的でした。しかし、現在では、働き方の変化の潮流にともなってオフィスに必要とする機能そのものが変化、それに見合ったオフィスの最適化を検討するようになってきています。

コロナ禍の影響による市況の不透明感から、今後のオフィス戦略に頭を悩ませている企業様も多いかと思います。働き方の変化の著しい現代においては、移転計画の初期段階から、

・自社に必要な機能・環境はどのようなものか
・それを実現させるためには、どのような立地で、どの程度の面積が必要なのか

企業ごとに分析を行ない、その最適化を図っていくプロセスが非常に重要だと考えています。

FRSの強みは、こうしたプロセスをお客様と一緒に検証し、相応しいオフィス提案を一気通貫で行なうことができます。今後のオフィスを検討し始めている企業様は、お気軽に営業担当までご連絡ください。
(著:FRS広報チーム)