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コラム : 第49回

目先のコロナ、その先のサステナビリティ

皆さん、こんにちは! FRS広報チームです。
コロナ禍で、働きかたにも様々な影響が出ているのはご周知のとおりですが、オフィスデザインの分野にも様々な影響が出ているといいます。そのなかで提唱される考え方のひとつが、昨今特に耳にすることが多くなった“フィジカル・ディスタンシングデザイン”。
ソーシャル・ディスタンシングではなく、フィジカル・ディスタンシング…?いったいどんなことなのでしょうか。

今回のコラムでは、そんな謎を解き明かすべく、タイルカーペットのリーディングカンパニーであるインターフェイスジャパン社と、その日本総代理店である川島織物セルコン社にお話をうかがってきました。

ぜひ最後までお付き合いください。

■会社紹介

川島織物セルコン

1843年(天保14年)に呉服悉皆業として創業。
欧州視察にヒントを得て、織物による室内装飾を考案。1888年(明治21年)に明治宮殿の室内装飾に織物を提案、インテリアファブリックの歴史をスタートさせた。
伝統を尊重しながら革新していく企業文化で、革新的な製品の数々を世に送り出している。2012年にインターフェイス社との総代理店契約を締結、日本国内の流通を統括している。

インターフェイスジャパン

1973年にアメリカのジョージア州アトランタで創業。
タイルカーペットを発明した会社として広く知られ、グローバルでトップシェアを誇るフローリング・カンパニーの一つ。豊富なバリエーションで展開する製品は、常に時代の半歩先を行くデザイン性・機能性の高さを兼ね備え、環境問題・サステナビリティへの高度な挑戦で、業界をリードし続けている。

お話をお聴きした方々

株式会社川島織物セルコン
東京営業開発部 岩永貴博部長、小倉仁主幹、横内理恵様

インターフェイスジャパン
杉尾涼子ビジネスマネージャー

■フィジカル・ディスタンシングデザインとは?

——フィジカル・ディスタンシングデザインについて、まずはその概念について教えてください

杉尾氏:緊急事態宣言が解かれた後、デザインにもフィジカル・ディスタンシングが求められだしました。用語としては、日本でいう“ソーシャル・ディスタンシング”と同義です。欧米ではソーシャル・ディスタンシングよりも、フィジカル・ディスタンシングと表現するのが一般的になりつつあります。

——欧米では、ソーシャル・ディスタンシングという用語は使っていないのですね

岩永氏:日本では“フィジカル”という単語があまり一般的ではないためか、まだ変わらないですね。

——欧米で一般的な用語になりつつあるとは…まったく知りませんでした

杉尾氏:コロナ禍においては、物理的な距離を離すことが求められますが、社会的な動物である人間は他者と隔絶しては生きていけないということから、物理的な距離は保っても心の距離は離れてはいけないという点で、敢えて”フィジカル”と表現される側面もあるようです。

——確かにそうですね、ありがとうございます。次に、製品について聴かせてください。フィジカル・ディスタンシングデザインで提案する製品群は、コロナ禍において開発されたものでしょうか

杉尾氏:既存の製品群から構成しており、新たに開発されたものではありません。
当社の製品は、ラインナップが豊富なので、その組み合わせによってフィジカル・ディスタンシングを確保するフロアデザインを提案しています。コロナ禍が過ぎ去った後も楽しめるフロアデザインをお選びいただきたいですよね。

フィジカル・ディスタンシングを表現したカーペットの使用例

——既存の製品の組み合わせで表現されているのですね

杉尾氏:はい。私たちには、コロナという目の前の敵がいますが、その先には環境問題という大きなテーマがあります。目先のコロナに対策を講じながらも、並行してその先の未来のために早急に環境問題にも手を打たなければなりません。

——そのとおりですね。環境問題は、誰しもが気付いてはいるけれども、なかなか動けていないのが現状ではないかと思います

■インターフェイス社の考えるサステナビリティ

——御社では、実際どのような環境・サステナビリティのための取組みをされていますか

杉尾氏:分かり易い製品や制度をご紹介しますね。

i2(アイツー)

杉尾氏:元々タイルカーペットは、製造ロットが違うと色味や風合いの違いが目立ってしまうものですが、アイツー製品は、柄が複雑でランダムにデザインされているため、製造ロットの違いによる色味や風合いの違いが出にくくなっています。そのため、品番ごとにお客様側で在庫を保有する、いわゆるロット管理の必要がありませんし、当社としても、在庫製造のために余計なマテリアルを使わないで済むため、環境に優しいのです。

——購入したお客様がそれを来訪者に語ると、環境意識の高い会社と思ってもらえそうですね

杉尾氏:そうですね。インパクトのあるストーリーになると思いますし、話題の広がりも期待できますよね。

Circuit Board(サーキットボード)

複雑なデザインと色と組み合わせによって自由な表現が可能

カーボンオフセット(Co2相殺)証書

カーボンオフセット証書(FRS親会社の㈱フォーバルに提供いただいたもの)

杉尾氏:インターフェイスの全ての製品は、製品の原料調達から製品の寿命を終えるまでに発生するカーボンを相殺しています。したがって、お客様は、購入するだけでカーボンオフセットの取組に寄与することができることになります。インターフェイス社の製品のご購入によって、いったいどれだけのカーボンを相殺できたのか、証書を発行しお渡ししています。

——それは、私が購入者なら必ずいただきたいですね。ブランディングに寄与しそうです

岩永氏:従来は「環境に優しい商材ですよ」までしか言えませんでした。それが、インターフェイス社の製品は、定量的に見える化ができています。証書は、エントランスに置きたいというお客様からのオファーが殺到していますね。昨今、SDGsの意識がやっとのことで盛り上がり始めています。インターフェイス社の製品はこの文脈にぴったりと合致しています。

——オフィスデザインは、どうしても予算ありきのご提案になりがちですが、御社の製品はその予算の枠を超えていける可能性がありそうですね

小倉氏:顧客にご提案する際にも、その点はやはり重要です。床にもしっかりしたデザインが施されているオフィスにこそ、優秀な人材が集まってくるのだと考えています。

杉尾氏:私たちは、美しいデザインだけでなく、コンセプトやストーリーをお届けしています。ただカーペットを販売しているだけではないんです(笑)

岩永氏:美しく、機能的なデザイン群なので、当然追随する模倣品が出てきますが、そういう製品にはストーリーがないですよね。

小倉氏:真似されなくなったら終わりだ、とも言っていますしね。

岩永氏:営業としては困ることもありますけど(笑)

——たしかにそうですね(笑)

小倉氏:それと、床材は、ある年数ごとに廃盤にしなければならないタイミングが訪れるものですが、インターフェイス社は、原材料の供給が終わらない限りは、廃盤にしません。それも長くお客様に使用いただけることに繋がっています。

——徹底されていますね!

杉尾氏:インターフェイスは、業界トレンドの半歩先を歩いています。お客様がまだ気付いていないニーズを察知し、製品開発していくことで新たなトレンドを生み出しています。例えば、コロナ禍で抗菌製品が注目を集めていますが、当社の製品は、すべて標準で防汚・抗菌加工が施されています。

——それはコロナ禍においても非常に安心材料となりますね!

■バイオフィリックデザイン

——業界トレンドの半歩先を行くデザイン、他にはどんなものがありますか

参考資料:「Human Spaces」の調査結果をもとにしたFRSの提案資料から抜粋

バイオフィリックデザインは、自然との結びつきを求める人間の欲求への回答であり、建物内の環境で自然との触れ合いを再構築するための取り組みのことです。究極的には自然からインスピレーションを受けて建物をつくるための理論・科学・実践であり、同時に私たちが日常生活を営み、働く環境において人と自然との触れ合いを継続させることを目指しているものです。

引用元:Human Spaces: 世界中の職場における、バイオフィリックデザインが与える影響

杉尾氏:床は普段あまり見ることはありませんが、面積があるのでデザインを施すとガラリと雰囲気が変わります。例えばヒューマン・コネクションというコレクションは、「人と自然をコネクトする」というコンセプトが掲げられた、バイオフィリックデザインの製品です。本能的に人間は、海や山、香り、自然光など自然を近くに感じ、癒されたいと思っています。それを満たしてくれるのがバイオフィリックデザインです。

ヒューマン・コネクション コレクション:石畳と苔がデザインされている

——たしかに、最近のオフィスではグリーンを採り入れるケースが増えていますね

杉尾氏:バイオフィリアというコンセプト自体は、80年代の初め頃に提唱されたものですが、最近になって特に注目されるようになりました。自然から離れつつあることに人間が本能的に危機を感じているのかもしれません。インターフェイスが発表したHuman Space Reportにおいて、オフィス環境に自然要素を採り入れた場合に、どのようなメリットがもたられたかを公表しています。


・植物や日光といった自然の要素のある環境で働く人々の幸福度は、自然の要素が無い環境で働く人々よりも15%高い

・植物や日光といった自然の要素のある環境で働く人々の生産性は、自然の要素が無い環境で働く人々よりも6%高い

・植物や日光といった自然の要素のある環境で働く人々の創造性は、自然の要素が無い環境で働く人々より15%高い

引用元:Human Space Report: 世界中の職場における、バイオフィリックデザインが与える影響

——データで示すことができるのは大きいですね

岩永氏:これからのオフィスは「従業員が会社にくる理由・意味」を考えなければなりません。心の状態が芳しくないため出社できなかったスタッフが、バイオフィリックデザインによって、会社にくることで心のメンテナンスができるようになったら理想的ですね。

■ミッション・ゼロ

——御社の創業は1973年とうかがっていますが、当初からその崇高な環境意識をお持ちだったのでしょうか

杉尾氏:嬉しい質問です(笑)。創業当時は、じつは特に意識していなかった。元々は、良いデザインの製品を作ってお客さんにもっと喜んでもらって、売上を拡大しよう、という一般的な会社でした。それが、90年代はじめに、米国内でどうしても受注したい大型案件がありました。そのときそのクライアントから、
「ところでインターフェイスさん、あなたがたは、どんな環境への取組をしているの?」
と尋ねられました。
私たちは、それに何も答えることができませんでした。結果、その案件は失注してしまいます。
そんなとき、創業者のレイ・アンダーソン(Ray C. Anderson)は、環境に関する一冊の書籍を読みました。当時を振り返って彼は、「胸に矢が刺さる思いがした」と語っています。そして、「これからの企業は、良い製品をお客様にお届けするだけでなく、環境にも貢献していかなければならない」と考え、ミッション・ゼロという2020年までに地球環境に与える負荷をゼロにしょうというミッションを掲げ、私たちのビジネスの在り方を根本的に変える取組みを開始しました。
それから20年以上続け2020年を迎えましたが、埋立ゴミを91%削減できたり、水の使用量を削減できたりと、大きな成果を収めることができています。モニタリングの結果は、当社のWebサイトに公表しています。

——すばらしい取組みをされ続けていますね。しかし、ロット管理が要らないことなどは、機会損失にもつながりそうな英断をされたのですね

杉尾氏:そのとおりです。当時このことは業界内外に激震が走り、株価も下落しました。「いったい何を言っているんだレイ・アンダーソンは」という世の中の反応で、まるで理解されませんでした。
しかし、ずっとそれを続けてきた結果、いまでは世界でもっともサステナブルな企業のひとつとして、世界中で評価されています。この事例は、環境への取組みによって業績が落ちたりしない、という成功事例となったと思います。

——そうですね、躊躇しているすべての組織の背中を押してくれそうな事例ですね

杉尾氏:2020年を迎え、新たな取組みとして、クライメイト・テイクバック(Climate Take Back/気候を取り戻す)を提唱しています。気候変動によって進んでしまった地球温暖化の時計の針を巻き戻そう、という取組みです。

——メーカーとしての製造段階での取組みや仕組み作りも重要だと思いますが、やはり顧客フロントに立たれる杉尾さんのような方々が、高い環境意識や愛社精神をもってご説明されているので、一層伝わるのではないかと思います

杉尾氏:社員ひとりひとりが、創業者の思いや製品の素晴らしさを実感し、納得し、より多くの人に伝えたい、広めたい、というモチベーションで活動しています。私たちがワクワクする製品やコンセプトは、やはり皆さんにご紹介したいと思います。

——はたらく環境として本当に理想的です。本当に素晴らしいですね!
学び溢れるお話ばかりでまだまだお聴きしたいことがありますが、今回のインタビューは一旦〆させていただきます。本日はありがとうございました!

■参考資料

・川島織物セルコン社 コーポレートサイト

・インターフェイス社 コーポレートサイト